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2022.04.29
ふるさとのお菓子でお茶しよう①

ひと息つきたいお茶の時間にいただきたい、地域素材を使ったふるさとのお菓子。
そして、実は隠れたお茶どころでもある四国。
なかなか知られていないけれど、実はすごいお茶の生産者とその現場を取材しました。

「七福芋本舗が管理する畑は増えているが、作業をする人が少ないため、なかなか収量が増えないのが悩み」と白川さん

小さな島で生まれた 濃厚で甘い希少いも

 愛媛県新居浜市内からフェリーで約15分。周囲わずか9.8キロの大島は伊予水軍の頭領であった村上義弘生誕の地とも伝えられ、伊予水軍の遺跡が今も残るのどかな島です。人口は約250人、そんな島で育てられている「幻のサツマイモ」があるといい、島を訪ねてみました。

 案内してくださったのは七福芋本舗の白川真衣さん。昨年から、白いもの栽培に携わっています。「とても甘くて美味しい白いもが、大島でしかつくれないこと、そして農家さんが高齢化し収穫量が極めて少ないことに注目した先代の社長が島に通い詰め、農家さんを説得してまわり2003年頃から農地を借りて一緒に収穫を始めたり、白いもを使った商品化を推し進めてきました」

 この島で収穫した白いもは「七福芋」と呼ばれ、熟成させると糖度15度と、その甘さはスイートポテトや栗きんとんに匹敵するほど。ちなみに白いもを育てられるのは大島を入れて全国3カ所の島だそうで、土壌や気候の影響を受けやすく、なぜこの地域だけで育つのかはっきり分からないそうです。地元の農家さんは5〜6人、そして白川さんやグループ会社の助っ人が入っても年間生産量は多くて8トン。昨年は半分ぐらいだったそう。7〜8割は七福芋本舗が買い取り、残りは自家消費をするためほとんど生いもは市場流通には乗らないといいます。

 「七福芋のおいしさを全国に広めるため、新居浜市では“にいはま大島七福芋ブランド推進協議会”というものがあり、七福芋をブランド化する流れができています」と白川さん。同社では生いもの他にペーストやダイス状の加工品を冷凍し、飲食店や菓子製造業者に卸しています。

 次に七福芋を使ったお茶菓子が食べられるという、創業昭和6年の老舗和菓子店「菓舗蛭子堂」を訪ねました。「“瀬戸の源氏巻”や“みこし太鼓”など定番は20種類ほど。朝生菓子などを含めると40~50種類ほどでしょうか。お菓子で季節感や地域らしさを感じていただきたい」と、三代目の高橋英幸さん。甘みがありねっとり粘りが強い七福芋を使ったレシピを約10年前に開発し、商品化をして約8年になります。

 「いものペーストに白あんを加え、更にバターを加えてクリーミーさを出すなど、和菓子の域を超えた組み合わせにも挑戦しています。“黒三笠”は、白あんのペーストと取り合わせが面白い竹炭入りの生地でサンド。“大地の恵み”は、ダイス状の七福芋をあんペーストの中に混ぜ込み、愛媛県産はだか麦で包み込みました。」七福芋のおいしさをどう生かすか、まんじゅう、最中、大福なども試したうえで、現在のラインナップ にたどり着いたという高橋さん。店の味と技術を守りつつ、チャレンジを続けています。

大島へは、新居浜黒島港から市営フェリーで約15分。ほぼ1時間に1本運航されていて運賃は片道大人ひとりたったの60円!
3月初旬にハウスに種芋や培養苗を植え、ツルが伸びてきた6月頃から大島の畑に七福芋のツルを植える。鳴門金時など のサツマイモと比べると、ひとつのツルに実る芋の数も少ないのだそう。収穫は10月末~11月頃。左は新居浜市内のハウスで作業をしていた、師匠の秋月純一さん
皮が白っぽくひょうたん型をした七福芋。貯蔵しておくと甘くなるため、12月~1月が旬といわれる。七福芋本舗ではスイーツや焼酎、コロッケなど、七福芋を味わい尽くせる商品が集まっている
◎七福芋本舗 愛媛県新居浜市久保田町3-9-27 土曜10:00~15:00のみオープン / 不定休 tel. 0897-34-9515

◎菓舗 蛭子堂 愛媛県新居浜市大生院988-3
9:00~19:00 / 水曜定休
tel. 0897-41-3841
白いも。黒三笠 250円 大島のめぐみ 210円