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2022.03.31
めいどのみやげ【その五】やまのカレー店主 高瀬媛子さん

誰もが一度は考えたことがあるだろう、
明日世界が終わるとしたら何を食べたい?
そんな究極のメニューを“めいどのみやげ”とここでは呼ぶこととし、
その人をつくってきた「食遍歴」を探ります。

埼玉県で生まれ育った高瀬媛子さん。
押し絵羽子板職人だったお父さんはお酒と美味しいものが大好きだったこともあり、
小さな頃から一緒に小料理屋や寿司屋に行ってはカウンターで大人と並んで一品料理をつまんでいたそう。
自宅で一緒に働く職人さん達を交えて、大人数で囲む食卓に出されるお母さんのお料理も、お出汁をしっかりと取り素材の味を活かしたものが多かったそうで、
「ファストフードなどはほとんど食べたことがなく、むしろお酒のつまみのようなものが好きでした」と高瀬さん。
その後高校を卒業し、実家を離れ東京での生活をスタート。
モデルや女優をしていたこともあり、自然と体の内面と精神面を労わることに意識が向くようになった時に出合ったのが、アーユルヴェーダだった。
インド・スリランカ発祥の伝統医療で、「ドーシャ」と呼ばれる
3つの要素とバランスを知り、自分の体に合ったものを実践するという方法。
日本でも第一人者と呼ばれる方の元で約3年間に渡りみっちりと学び、自身も指導できるまでになった。
その後2020年11月には縁あって愛媛県西条市に移住。
週に1度オープンするスパイスカレー店の店主としてお弁当を作ったりポップアップ出店したりと活躍している。

そんな高瀬さんが人生最後の食事に選んだのは、意外や意外な「たこ焼き」。
元々好きだったそうだが、移住してから近所にお気に入りのお店
“無添加たこやきおかだ”と“TAKOYAKI MAR”を見つけたことも大きな理由のひとつ。
「以前はたこ焼きはジャンクなものというイメージがありましたが、あれはもはや出汁ボールだと思うんです。タコから出る旨味と生地にたっぷり入ったあご出汁が、食べた瞬間とろっとろの生地とともに溢れ出すのがたまらないんです」。
それは10分も置いておくとすぐに萎んでしまうほど繊細なもの。
ソースもポン酢やだし醤油などシンプルなもので食べるのが至福なのだそうだ。
それ以外にも基本的には出汁の旨味がしっかりと感じられるものが好み。
そこには幼い頃から自然と培われた、母が大切にしていた料理の基本が根付いているのかもしれない。

高瀬媛子(たかせあきこ)
埼玉県出身、モデル・女優業と共に自身の店「やまのカレー」で西条市の食材をふんだんに使った体が喜ぶスパイス料理を提供している。
この春からは新たなキッチン・拠点も完成し、より活動の幅を広げていく予定。
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イラスト:山森めぐみ
漫画家・イラストレーター。愛媛県西予市出身。
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