- 2022.06.30
- めいどのみやげ【その八】株式会社 フードスタイル代表 近藤路子さん
誰もが一度は考えたことがあるだろう、明日世界が終わるとしたら何を食べたい?
そんな究極のメニューを“めいどのみやげ”とここでは呼ぶこととし、その人をつくってきた「食遍歴」を探ります。

愛媛県で最初に野菜ソムリエの資格をとった近藤路子さん。2000年ごろ、家業のスーパーマーケットがネットショップを開設するにあたり、先代から永年にわたり実店舗で培ってきた野菜や果物の目利き、そして鮮度や品質へのこだわりとお客さまからの信頼をインターネット上でどうしたら伝えられるか。ただ美味しい、新鮮ですではない付加価値を…とチャレンジしたことがきっかけだった。そして2004年に野菜ソムリエの資格を取得。結果、その延長線上にある農業や流通、食べ方などへ興味の矛先はどんどん広がり、現在のフードコーディネーターの仕事を手がけるようになった。自身は特に意識したことはなかったそうだが、ご両親が農業に関わる公務員だったことで旬の農産物に触れられたり、子どもの頃から祖母や母がつくる二人それぞれにしかつくれない美味しいものが身近にあったこと、そして京都で過ごした学生時代は今しか行けない場所で今しか食べられないものをと、貪欲に美食を探求したことも結果として全てが今に繋がっているそうだ。
そんな近藤さんが選ぶめいどのみやげは、メロン。
「最初のインパクトは香り、そして口に含んだ時の食感、そしてみずみずしい喉越しと余韻の三段階の楽しみがあるんです。そしてメロンは野菜なのに、雨に弱く高度な施設栽培で大切に育てられている、ちょっと気取った感じもかわいい」とのこと。またその美味しさを逃さず食べるために丸ごと食べるそう。ヘタの部分を最小限に切り取り、少しずつスプーンですくっていく。このスプーンも余分なジュースが出ず、果肉をすくいやすいなめらかで薄い口当たりのものを使用、完熟の場合はストローも時には使用しながら。そして中の種の周りものがさずすする。実はこの部分が最も栄養価が高く、美肌効果もあるのだとか。そんなふうに少しずつ上から食べ、食べ終わったところをカットしては食べ進むという方法が、果汁も滴らず逃さず全てを余さず食べられるのだそうだ。“メロ活”と呼んでいるこの食べ方。いろんなものを経験した上で、最後はシンプルに美味しいと思えるものに戻る気がするという近藤さん。その存在すら愛おしく感じるというメロンの、手間暇をかけて大切に育てられているその背景に目を向けているからこそなのだろう。
近藤路子(こんどうみちこ)
株式会社フードスタイル代表。愛媛の農産物や郷土料理などの食文化に精通し、様々なフードコーディネートやレシピ開発を手がける。料理番組監修の他、企業イベントや製品プロモーションに関わるレシピ提供を行う。
イラスト:山森めぐみ
漫画家・イラストレーター。愛媛県西予市出身。
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