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2022.04.29
めいどのみやげ【その六】ジャパハリネット中岡良一さん

誰もが一度は考えたことがあるだろう、明日世界が終わるとしたら何を食べたい?
そんな究極のメニューを“めいどのみやげ”とここでは呼ぶこととし、その人をつくってきた「食遍歴」を探ります。

 ロックバンド「ジャパハリネット」のドラムとして、ラジオパーソナリティとして、テレビのレポーターとしてマルチな才能を発揮している中岡良一さん。愛媛県に生まれ育ち、料理に関わる仕事をしていた両親の影響もあり、食に対する興味は自然と身についていったそう。母のそばで一緒にキッチンに立つことも多く、好き嫌いも特にないという幼少期。さらには、母方の祖父母も食に対する関心度が高かったことから、祖父からは肉や魚のこだわりの焼き方、祖母からはお米の美味しい炊き方やお味噌汁の温度管理などを教わって育った。大学に進学し「バンドを始めた頃は本当にお金がなくて、パン屋さんに並んでパンの耳をもらったりしていました」という時代を経て、2004年に『哀愁交差点』でメジャーデビュー。音楽で生活できるようになってからは、ツアー先で全国各地の名物といわれるものを時間を見つけて食べることが楽しみのひとつになっていた。現在は取材で生産者を訪ねることも多く、新鮮な野菜そのものの味を楽しみたいとドレッシングなどは使わず、美味しいオリーブオイルにバルサミコをシュッとスプレーし、そこに塩を少々。そんな食べ方にもハマっている。

 常にあらゆる関心の矛先はあるが、最近一番のブームは味噌。米麹味噌、豆味噌など素材によって味わいが異なる面白さ、地域によっても違う風味が興味深く、冷蔵庫には7種の味噌が入っていることもあったそうだ。「昔からずっと好きで、遠くから持ち帰るのも便利ですし。だからこそ今回一番に思い付いたのは祖母の味噌汁でした」。雪平鍋でさっと作ったいりこ出汁に、わかめと松山あげ。そこに甘くない米味噌をさっとといたら、小口ネギを少々。「そこに、炊き立ての白ごはんとじいちゃんの作った、大きくてしょっぱい昔ながらの梅干しが最高」とのこと。実はおじいさん、梅干しコンテストで優勝経験もあったほどの達人級の腕前。今は亡くなられて食べられなくなったそうだが、だからこそいっそう恋しく思えるのだろう。「昔はご飯に愛情なんか乗るものかと思っていたけれど、最近では愛情を形にしているものはそれなりに美味しいなと感じるようになった」という良一さん。「それが年を取るということなのかもしれませんね」と笑った。

中岡良一(なかおかりょういち)
愛媛県伊予郡松前町出身。松山大学フォークソング部で結成した「ジャパハ リネット」ではドラムスを担当。2015年の再結成以降は、バンド活動と 並行してFM愛媛のパーソナリティ、テレビ愛媛のバラエティレポーターと して活躍中。

イラスト:山森めぐみ
漫画家・イラストレーター。愛媛県西予市出身。
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