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2022.10.25
めいどのみやげ【その十二】オペラ歌手•通訳 角南有紀さん

誰もが一度は考えたことがあるだろう、明日世界が終わるとしたら何を食べたい?そんな究極のメニューを“めいどのみやげ”とここでは呼ぶこととし、その人をつくってきた「食遍歴」を探ります。

幼少期より松山で暮らし、大学進学を機に上京したという角南さん。音楽を専攻し、どんどんその魅力にのめりこみ、本場で歌を追求したいと大学院を出てすぐにイタリアに留学。オペラ歌手として活動しながら、結婚、出産も経験し、3年前にはピアニストのご主人の仕事の関係もあり、帰国して現在は東京を拠点に活動をしている。

イタリアのナポリに住んでいた角南さんに、食文化について聞いてみると「好きという以上に体との相性がとても良かったんです。ナポリはピザの発祥地なので実際マルゲリータなどはよく食べますし、そんなイメージもあるから太るのでは?と思われがちですが、むしろ私は健康になりました」と即答だった。レトルト食品などはほとんど使わず、旬の食材を食べられる時期だけ使うというスローフード文化が根付いているイタリア。また「家庭の味がきちんと継承されていて、この料理だけは誰にも触らせないという家族の掟のようなものもあります。トマトの収穫の時期には家族全員でおばあちゃんの家に収穫に行き、そのトマトを使ってその家のソースをつくり数カ月それを使ったりもします」とのこと。実際に角南さんの家庭では、パスタだけはイタリア人のご主人が必ずつくるというルールもあるそうだ。

そんな角南さんが悩んだ末に選んだめいどのみやげは「ナスのパルミジャーナ」。それも、義父のつくるものでないといけないとのことだ。ナスを薄くカットしたものをオリーブオイルでじっくり揚げて、自家製のトマトソースとチーズの燻製、そしてパルメザンチーズを何層にも重ねてオーブンで焼いたもの。肉を使わない野菜だけの料理で、トロトロ食感のジューシーなナスとトマト&チーズが絡み合ってなんとも奥深く、一口食べるととろけるような至福の味になるそうだ。もちろん帰国する際につくり方を教わってきたという角南さんだが、やはり本場のナスやトマトでしか出せない風味があるそう。「いろんな要素があると思いますが、一番の違いは野菜でしょう。イタリアならではの野生味のある濃厚な野菜が恋しくなります」と教えてくれた。ちなみに家族全員、お互いの国の食文化をリスペクトし合っているそう。息子さんはアサリの味噌汁のことを「ボンゴレの味噌汁」と呼ぶという微笑ましいエピソードが、それを物語っている。

角南有紀(すなみゆき)
岡山生まれ、松山育ち。東京学芸大学教育学部芸術課程音楽専攻卒業後、東京藝術大学大学院修士課程独唱科修了後、ナポリ国立音楽院大学院歌劇場歌手コース修了。以来オペラ歌手として活動しながら、報道番組のイタリア関連ニュース字幕や通訳家としても活躍中。

イラスト:山森めぐみ
漫画家・イラストレーター。愛媛県西予市出身。
双子の姉の方。新刊『憑きそい』発売中

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