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2021.12.14
めいどのみやげ 【その一】作家・作詞家 髙橋久美子さん

その一】作家・作詞家 髙橋久美子さん
誰もが一度は考えたことがあるだろう、
明日世界が終わるとしたら何を食べたい?
そんな究極のメニューを“めいどのみやげ”とここでは呼ぶこととし、
その人をつくってきた「食遍歴」を探ります。

四国中央市土居に生まれ、大学進学で徳島県に行くまで愛媛で暮らした高橋久美子さん。
実家が農家ということもあり、畑がスーパーがわりで野菜や果物の旬を感じる生活をしてきた。
東京に移り住んでからも、土のある生活を求めベランダ菜園は当然のこと、
現在は閑静な住宅街にある庭の広い一軒家に住み、30種を超える野菜や果物を育て
それらで食卓を彩るという生活をしている。
「東京こそ実は野菜を育てるのに適しているのかも。
天敵である猿やイノシシもいないから沢山収穫できるんよ」と笑う。
旬のものを旬の時期に食べる、そんな豊かな生活を過ごしてきた高橋さんの思い出の味はやはり、
祖母や母のつくる家庭の味。学校に行く前の朝ごはんは必ずおにぎりとお味噌汁で、
もちろんお米も梅干しも味噌も自家製。梅干しを入れ、きな粉をまぶした俵形おにぎりも大好きだったそうだ。
お味噌汁はもちろんいりこ出汁で。今でも高橋家の冷蔵庫には、いりこのストックも欠かせない習慣になっている。

そんな高橋さんが最後に食べたいと思うのは、『お母さんのつくるお寿司』。
「高橋家にとっては一張羅のごちそう。
誰かの誕生日や運動会などにお母さんがつくってくれたもので、
このお寿司が大好きだった祖父のことを今でも思い出すんです」。
東予で獲れるエビじゃこの皮をむき、皮をガラガラ沸いたお湯でゆがいたら一旦お湯を捨てる。
その皮を再度水からコトコト煮ると透き通った極上の出汁の出来上がり。
そのお出汁を使ってしいたけ、ごぼう、高野豆腐、人参、エビ、油揚げ、いんげんなど青い野菜を味付けし、
愛媛流のちょっと甘めの酢飯に混ぜ入れる。具材は必ず7つというのが決まりだ。
大皿で出されたそのお寿司をそれぞれのお皿に取り分け、錦糸たまごで彩ったら完成。
家族全員がそのお皿を前に目を輝かせながら待つ瞬間が、
その味と共に家族の幸せの象徴のようなシーンとして高橋さんの胸に焼き付いている。

高橋久美子(たかはしくみこ)
1982年愛媛県生まれ。
元チャットモンチーのドラムとして活動後、
2012年よりもの書きに。自身の作家活動の他、アーティストに歌詞提供するなど
幅広く活躍中。著書に、小説集『ぐるり』、エッセイ集『旅を栖とす』『いっぴき』など。

イラスト:山森めぐみ
漫画家・イラストレーター。愛媛県西予市出身。
双子の姉の方。近刊『いつだってごはんのこと。』

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