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2022.08.31
スタミナもりもり!スパイス&エスニックご飯

スパイシーな味付けで食欲そそる、エスニックご飯を特集します。エスニック料理に特化した農作物を育てる農園や身近な食材でできる簡単レシピをご紹介。

お米からマニアックな野菜まで農薬をほぼ使わず年間約80種を栽培

プリッキーヌ
ビキーニョ
スコッチボネット
ハラペーニョ
インドジンウソツカナイ

愛媛県東温市で農業を営む廣川慎太朗さん。東京出身で、飲食店に勤めていたことから食材に興味がわいて、福井県のお米やブロッコリーなどを大規模で栽培している会社へ就職し、農業を学びました。そこから知人の紹介もあり、気候がよい愛媛へ移住することを決めました。「愛媛は災害が少なく農業環境にも恵まれていますし、この地域は重信川の伏流水が湧き出す泉などもあり、水が豊富です」。

 最初は借りられる農地の面積も少なく、農協出荷の玉ねぎやブロッコリーなどを栽培していましたが、商売としては大変な日々が続きました。「野菜をつくりながら、プリンセスサリーというインディカ米を日本で栽培できるように改良した品種の米を福井から持ってきて栽培を始め、その営業でいろんな店舗を回るうちに、パクチーやレモングラス、唐辛子がほしいという要望が出てきたんです。お客さんの声を聞いているうちに、エスニック野菜の栽培へシフトしていきました」。廣川さんはできるだけ農薬を使わず、有機肥料と菌を使った土壌づくりを行い、安心安全で丈夫な野菜作りを目指しています。

野菜の王様と言われるほど、栄養価の高いケール。サラダにしても、おひたしや炒めてもOK

 とはいえ、当時愛媛にはエスニック料理店が数少なく、産直や農協に出荷できるように販路を開拓したり、「東温パクチー」を松山や東温市内の飲食店で食べてもらうプロジェクトを行なっていた途中、コロナ禍となり価格が大暴落。それが1年以上続き、またもや苦境に立たされました。

 「個人向けを増やしながら、地元東京にも販路を開拓し、八百屋を始めました。また、売れない唐辛子をどうしたらいいか考える中で、ジャマイカのソウルフルード、ジャークチキンのキッチンカー販売も始めました」。お客さんと対面で話をしながら、自分が作った米や野菜のお弁当を販売する。そして、プリッキーヌ(唐辛子)と国産アンチョビを使った廣川農園オリジナルの旨辛調味料「サンバルソース」なども手にとって見てもらったり。困難に立ち向かいながらも、自身も大好きだという、エスニック料理や文化を盛り上げたいという気持ちで日々、お客さんの顔を見ながら農業に取り組まれています。

 東温市のイタリア料理店「OTTO」オーナーの矢野さんとの出会いは10年近くなるそう。OTTOが2021年、開業10周年を迎えるに当たって考案したのが、パクチービール「Toby white ale」。廣川さんのパクチーを使い、ビール製造は三津浜の麦宿”伝”が行ないました。「パクチー嫌いな人に嫌われたくない!笑」と、廣川さんが言うように、パクチー感は抑えつつもレモンのさっぱり感でさっぱりした喉越しが楽しめます。

 この、パクチービールや廣川農園の野菜を使ったメニューが楽しめる店が松山市湊町のテイクアウト専門店「pepps on the table」。キッシュやフォカッチャ、サラダなどがショーケースに並び、毎朝収穫したての野菜が届きます。

◎Ethnic green farm 廣川農園
  Instagram:@ethnic_green_farm

Pepps(ペップス)
2021年7月にオープンしたテイクアウト専門店。愛媛県東温市のイタリア料理OTTOの姉妹店で、廣川農園の野菜を使ったサンドイッチやキッシュなどが並ぶ。また、店内では毎朝届く野菜やプリンセスサリー米、サンバルソース、パクチービールも購入可能。

愛媛県松山市湊町4-13-1
11:30-20:00、月・火曜休
Instagram:@pepps_onthetable