- 2021.12.27
- 島の音、土の声【第二回】
【第二回】 「おいしい色」
夕方、周防大島の国道を車で走る。
本州との間にかかっている橋を自宅から目指すと、海岸線沿いの道を、ちょうど西を向いて走ることになります。すると、晴れている日はかなりの割合で車を止めてしまいます。
「うわあきれい〜」
見慣れているはずの夕日でも、どうしてか目を奪われます。それがまた、毎回ちょっとずつ表情が違っていて。当たり前のように存在している天体・太陽ですが、その光を浴びる山の木々や草花はなんとなくうれしそうに見えてしまうし、人間の僕もそのありがたさに思わず手を合わせたくなります。太陽がなければ、大好きなコメもナスも玉ねぎも食べられません。植物のエネルギーの源であると同時に、光を浴びると直接的に自分も元気がやたらと出てくる気がします。絶妙な温度感。唯一無二の輝き。それにしても―――。
「何かに似てるな」
夕日をたびたび見ていると、何かを彷彿するとさせるようになりました。なんだっけ?…あれは…そう…島でよく作られている…名産の…。
「みかんだ!!」
これに気付いたとき、のどの奥につかえた魚の骨が取れたような気持ちになり、うれしくなりました。周防大島 は山口みかんの約85%を生産しているといわれ、愛媛みかんとしのぎを削るライバルとでもいえるでしょうか。しかし、東にはメガ名産地・和歌山や西には九州が控えており、私たち隣同士、ついに手を取り合う季節が来たのかもしれません。
さて、僕はTシャツやチラシのイラストなども描くのですが、絵と服のボディカラーや紙の色は何がいいかな〜なんて考えるときに、いかにも ”おいしそうな色“の組み合わせにたどり着くと「キタ」と小さく叫んでしまいます。「うん、おいしそうだ。」あくまで主観ですが、その線引きが結構重要です。オレンジ、赤は、いかにもおいしそう。緑、黄、グレー 、茶、白は安定だね。青は…うーん。紫の汁が出てくるナス…どうなんだ、例外か。紫芋、イカ墨…どうなんだ。皆さんにとっての「おいしい色」はなんですか?

中村明珍(なかむらみょうちん)
1978年東京生まれ。2013年に東京から山口・周防大島に移り住む。島の農産物の通販、オンライン配信やイベント企画も手がける。2021年ミシマ社より『ダンス・イン・ザ・ファーム〜周防大島で坊主と農家と他いろいろ』を刊行。