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2021.12.03
島の音、土の声【第一回】

「食は人を出会わせる」

 初めまして。僕は、山口県の周防大島という島で農家兼僧侶として暮らしてもうすぐ十年となる、中村明珍(みょうちん)と申します。その前は、銀杏BOYZというバンドで、チン中村という名前でギターを弾いたりしていました。
 さて、皆さまは周防大島をご存知でしょうか?
 「僕からは、あなたたちが見えています」
 いや、すみません。偉そうに言うことではないのですが、瀬戸内海で三番目に大きいこの島には、愛媛県松山市と山口県柳井市を結ぶ航路があります。そして今住んでいる場所から朝日が昇ってくる先に見えるのが松山市であり、西には大洲市、八幡浜市あたりも見えています。
 なのに!この連載を始めるきっかけになった人、矢野さんは、僕と初めて会った時に「すみません、正直こんな島があるのを知りませんでした!」と言っていました。グスン。ですが、僕も以前は知りませんでした。
 島に来て農業を始めてすぐの頃、「売る場をつくる」必要があることを農家の友人から聞きました。オーガニックというくくりだったり、作り手売り手のバランス、農産物との出会い方の工夫などいろいろ理由があって、彼らとマルシェを創設。それは思った以上にうまくいき、同時に自分の農業のかたわら、友人の生産物を届けることも始めました。そんな折「食材を探していて…」と、メールをくれたのが先の矢野さん。「飲食店の人かな?」と思い、島のフェリー乗り場で待ち合わせ。出会った瞬間、出で立ちが「ライブハウスによくいる人だ」と面食らいましたが、それもそのはず。彼は日本有数のプリント職人であり、バンドマンであり、FM愛媛の番組MCとして知られるガッツムネマソさん。かくいう僕も音楽で育った人間であり、お互いライブハウスならぬ桟橋で「食材」という楽器を通して出会ってしまいました。食ってすごい。

中村明珍 (なかむらみょうちん)
1978年東京生まれ。2013年に東京から山口・周防大島に移り住む。島の農産物の通販、オンライン配信やイベント企画も手がける。2021年ミシマ社より『ダンス・イン・ザ・ファーム~周防大島で坊主と農家と他いろいろ』を刊行。

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